心理士として「内省する」ということ

今回は、心理士として私が大切にしていることについてお話したいと思います。

先日、私が大学院生の時に臨床実習の指導をしてくださった教授の、ご退官前の最終講義に出席してきました。
その先生は、いつもとても厳しくて、大学院生だった私はいつもびくびくしていたのを覚えています。
しかしその時教わったことが、心理士としての礎となっています。

先生が厳しくしつこく指摘し続けてくれたのは
心理士としての姿勢の部分であったと思います。
そして最終講義の中で最後に伝えてくださったのも、やはりその部分だと感じました。

先生はよく学生たちに対して「逃げるな」と仰っていた記憶があります。
目の前のクライエントと真剣に向き合うことから逃げてはいけない。
自分自身と真剣に向き合うことから逃げてはいけない。
そういうことだと思います。

そして当時からよく「内省」の重要さを繰り返し指摘してくれていました。
内省とは、自分自身の内面に目を向け、自分の考えや言動を振り返り、気づくことです。
自分の至らなさ、間違い、限界、それに伴う自分の感情、そういったものに常に目を向け、受け入れる必要があるということです。

内省することで自分の未熟さにがっかりして落ち込むことは、臨床心理士になってから十数年経った今でも多々ありますが、それも必要なことなのだと思っています。
だからこの先も私はその過程を何度も繰り返していくのだろうと思います。

それは私にとってしんどいけれど楽しみでもあるのです。
内省を重ねた分だけ、自分を構成しているものの濃度が濃くなり、自分がより自分らしくなるような気がするからです。

相談に来てくださる方も「自分の内面に目を向けるのが怖い」と仰るときがありますし、言葉にされなくても、多くの方がそう感じていることと思います。
自分の内面に目を向けるのが怖い気持ちは、痛いほどわかります。

だから、そんな時は焦らなくても大丈夫です。
無理な時は無理でも良いんです。

私たちは、相談に来てくださった方を指導したり無理矢理引き上げたりするのではなく、共に歩んでいきたいと思っています。