自分と他者の境界線

自分と他者は別のものであるという境目、または輪郭のことを「自他境界」と言います。
つまり、自分と他者をはっきりと区別する境界線のことです。

心理学の歴史の中で、この自他境界に関する研究はたくさん行われてきました。
学派によって理論や背景は異なるものの、心や人間関係の安定のために重要とされていることは一致しています。
それは、自分と他者の境界線をしっかりと持つことです。

自分と他者の境界線のイメージはこんな感じです。
自他境界が曖昧な方は、たとえばこんなふうに考えてしまいがちです。
「〇〇さんは私のせいで怒っているのかな?」
「何とかあの人の感情を沈めなきゃ」
「〇〇さんの考えているように行動しなきゃ」
「私がこんなに悲しいのに、なぜ気づいてくれないんだろう」
「なぜあの人は、私が思っていることを察して気遣ってくれないんだろう」
「あの人のせいでこうなった」

これはいずれも、「私は私、あなたはあなた」という感覚が乏しい状態です。
その感覚が乏しいと、自分自身の考えや感情を意識しにくくなり、自分の意思や感情に従って決断したり行動することが難しくなってしまいます。
判断基準を他者に委ねてしまったり、盲目的に他者の意見に従ってしまいます。

その結果、自分の人生を主体的に生きることが難しくなり、他者に侵害されやすくなってしまいます。

あなたは、他者の感情の責任を負う必要はありません。
他者の人生の責任を負う必要もありません。
あなたは、あなた自身の考えや感情に従って、自分のことを決めて良いのですよ。

自他境界をしっかりと持つことは、自分だけでなく、相手を尊重することにもつながります。

自分とは異なる考えや感覚を持った他者という前提があるからこそ、
自分が相手の期待通りにできなかったり、相手が自分の思い通りにならないことも受け入れることができます。
そして相手を理解しようと努めることができるのも、自分とは異なるということを意識できるからなのではないでしょうか。