困った時、「助けて」が言えますか?

困った時、不安な時、辛い時、一人では解決できない時......
あなたはどうしていますか?

誰かに「助けて」と言うことができていますか?

この、人に頼ることができる力のことを心理学的には「援助希求能力」と言います。
人に頼れることは、生きていくために必要な能力のひとつなのです。
特に東日本大震災以降、この能力が重視されるようになり、「受援力」などと呼ばれるようになりました。

私はこの、困ったときに人に頼ることができる力こそ、全ての人が希望を持って主体的に生きるために最も重要な能力なのではないかと考えています。

なぜなら、困難な課題に直面したとしても、ある部分を手伝ってくれる誰かがいたら、その課題が解決して先に進めるかもしれないし、
すごく不安なことがあっても、その不安を一緒に抱えてくれる人がいたら、不安があっても進んでみようという気持ちになれるからです。

人は決して一人では生きられないし、一人で生きていく必要もないのだと思います。
人はそれぞれに個性があり、得意なことも苦手なことも、好きなことも嫌いなことも異なるのだから、互いにそれを貸し借りして、互いが自分の進みたい方向へ進んでいけたら良いのだと思います。

しかし残念ながらそれは、多くの人にとって難しいことのようです。

内閣府は2018年に7カ国(日本、韓国、フランス、英国、ドイツ、米国、スウェーデン)の13~29歳の人を対象に『わが国と諸外国の若者の意識に関する調査』を実施しました。それによると、「悩みや心配ごとがあった場合、誰に相談したいと思いますか」という質問に対して、「誰にも相談しない」と答えた人の比率は、日本が群を抜いて高いという結果が得られました。

このことは、日本人の孤立・孤独・自殺率の高さとも関係していると言えるでしょう。
多くの日本人に、「他者を頼ることは他者に迷惑を掛けることであると同時に、甘えや敗北を意味する」という価値観が刷り込まれてしまっているのでしょう。

では、ここで考えてみたいと思います。
皆さんは、誰かに頼られた時、どう感じますか?
どんな頼みかにもよると思いますが、頼られて嬉しいと感じることの方が多いのではないでしょうか?

私は、誰かに頼られるとやはり嬉しいです。
それが自分のできることであれば力を貸せることを嬉しく思いますし、
自分のできないことであれば、それをどうにかする方法を習得する機会を与えてもらったと感じ、それを一緒に取り組めることを嬉しく思います。
そして、その人の助けになれる自分でいさせてくれてありがとう、という気持ちが沸きます。

誰かを頼るということは、その人のことを信頼し、承認している証拠を相手に与えてあげていると言えます。
それにより、頼られた人は自分の存在を肯定された嬉しさや自信を感じることができます。
また、人は生得的に他者を助けることに喜びを感じるようにできており、人を助けることで、心の健康度が増進するそうです。
このことはいくつもの研究で証明されているので、「情けは人の為ならず」は本当だった! と言えますね。

つまり、誰かを頼るということは、一方的に相手の時間や労力を奪うものではなく、相手に与えることでもあるのです。
誰かを頼ることを躊躇しそうになったら、そのことを思い出してほしいなと思います。

頼る力についてはまだ書きたいことがあるのですが、長くなるのでまた別の機会にします。