パニック障害を乗り越える~挑戦の記録~

先日、ある方の挑戦のための旅に同行させていただきました。
ご本人の許可を得たので、ご紹介したいと思います。

その方は、パニック障害を治したいとのことで、昨年の4月にカウンセリングを開始しました。

外でパニック発作を起こしそうになった時にどうしていいか分からない。
友人や家族との会食があっても、途中で具合が悪くなり退席してしまう。
慣れない場所に一人で行けない。
人ごみに行けない。
遠出ができない。
乗り慣れない電車に乗れない。
などの課題を抱えておられました。

上記の場面になると
動悸、苦しさ、冷汗、目眩、過呼吸などの症状が出現してしまうとのことでした。

パニック障害の特徴として、不安になる場面を避けることが挙げられます。
しかしこの病気は、不安な場面を避けることでより症状が悪化します。
ですので、パニック障害の治療としては、不安な場面に直面させていくことになります。

この方の場合も、不安が低い場面から高い場面まで一覧表(不安階層表)を作り、ひとつひとつ作戦を立て取り組んでいきました。

パニック障害が引き起こす不安に立ち向かうためにこの方が習得したのは以下の方法です。
・呼吸法
・リラクゼーション法
・認知再構成法(捉え方の修正)
・注意機能訓練(注意を分散させる)
これらの方法を用いながら、不安を感じる場面に少しずつ立ち向かっていきました。
パニック障害の方の感じる不安は、そうでない人とは比べ物にならないほど強いので、
不安を感じる場面に立ち向かうのは相当勇気が要ることです。

それでもこの方は、パニック障害を克服したいという強い意志と、自分自身を信じる気持ち、
そして主治医や私の言葉を信じてよく頑張っておられました。
その結果、パニック障害を発症してからできなくなっていたことが、ひとつずつできるようになっていきました。

この方の最終目標は、新幹線に乗ることでした。
他の課題はクリアできましたが、新幹線に乗ることは、この方にとって最も不安が高まることなので、
なかなか挑戦できずにいました。

そこで、「パニック障害克服のための旅」と題して新幹線の旅に同行させていただくことにしました。
そして無事に新幹線に乗ることができました!
乗車前も乗車中も全く動揺することなく、余裕のご様子でした。
「前日は緊張して少し不安になりましたが、いざ旅が始まってしまうと全然平気でした。
これからは夫や友人とも新幹線で旅行に行けます。どこに行こうかな。」と笑顔で話していました。

苦手なこと、不安なことに立ち向かうこと、
それはとても難しいことです。
「もし〇〇だったらどうしよう」
「自分にはできないかもしれない」
そんな不安を乗り越えなければ成し得ないことだからです。

それでも挑戦を可能にするのは
「自分でどうにか対処できるだろう」と自分を信じる気持ち
「対処できなかった時には誰かが助けてくれるだろう」と他者を信じる気持ち
そして何より本人の勇気だと感じます。

不安を抱えながらも挑戦したという実績は「自分の意志と行動で乗り越えられた」という自信になり、
これから先も不安なことに直面した時の自分を励ましてくれると思います。

挑戦の先の景色は、挑戦しなければ見られません。
きっとこの方は、これから先もたくさんの景色を見ることでしょう。

私たちはこれからも皆さんの挑戦のお手伝いができたら嬉しいです!